ベトナムに重症脳卒中患者が多い理由を考えてみた

出典:Pixabay

2015年よりNGOの一員としてベトナムの地域医療に関わっているのですが、訪れる度に重症脳卒中患者の多さに驚きます。

日本では中年の方の場合、脳卒中になってもリハビリテーションを適切に受けると大体が再び歩くことが出来ます。

しかし、ベトナムの場合、比較的若い50代の方であって全く歩けないというのをよく見かけます。

今回は、なぜベトナムには脳卒中患者が多いのかなぜ重症化するのかについて考えてみました。

①塩分の高い食事と過剰な飲酒

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ベトナム料理というとフォーや生春巻きなど味の薄い料理を想像しませんか?

しかし、実際に現地で食べられているものはとても味付けが濃く、塩分が高い料理が多いのです。

実際に『ベトナム人の塩分摂取量はWTO推奨の2倍』という記事もみられます。

その影響で高血圧の人が多いという話を何人もの現地スタッフから聞きました。

日本では、高血圧を服薬でコントロールしている人が多いのですが、ベトナムでは自分が高血圧だと自覚していない人が多く、またそのリスクについて認識している人も少ないのです。

またベトナム人は飲酒が大好きです。

私がベトナム人宅にホームステイした時も問答無用で飲まされる、一気飲みの連続と大変な飲みの席でした。

当然ですが、飲酒は高血圧の要因となるのでこれらの食文化が影響しているのは間違いないとみています。

②運動不足

ベトナムはバイク社会として有名です。

一人一台バイクを持っていることも珍しくありません。

そのためベトナム人は歩かないと言われています。

これに関して隠れ肥満大国、ベトナムの現状では以下のように報告しています。

こうしたこともあり、今年からホーチミン市交通安全委員会では、市民に 1 日 300m 以上歩くよう呼びかける「徒歩運動」の開始に向けた計画の策定を進めています。このように 1日 300mも歩かない人が大半のようで、弊社のベトナム人社員曰く、「一番歩くのは大型ショッピングモールの中」という冗談とも本当ともつかないことを言っていました。

実際にホームステイ先のお母さんは100m先の職場にもバイクで通勤していました。

運動不足も塩分の高い食事・飲酒と同様に高血圧の要因となるため影響していると思われます。

③農村部と貧困

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ベトナムの農村部には病院が非常に少ないため、病気になっても病院に行けないケースが多いです。

そのため、脳卒中になっても血栓溶解療法や血腫除去術といった早期治療が受けられない人がほとんどです。

また貧困家庭では、医療を受けるお金がなく、高血圧と知っていても降圧剤が買えない脳卒中を発症したけど放置したという患者を何人もみました。

これらが重症化を招いている一因であると考えています。

④障害に対する認識

家族主義が強いベトナムでは家族が病気になった場合、仕事を辞めてでも介護に専念するのが一般的です。

この考え方は素晴らしいと思う一方で、患者は介護してもらうことが当たり前と考えてしまいます。

そして、本来頑張れば自分で出来るようになることでも任せてしまうのです。

また介護をする家族は仕事がないため貧困に陥るケースも多いと聞きます。

これに関しては、ベトナムの人たちが昔から培ってきた考え方であり、何が正しいかは私一人が判断できることではありません。

しかし、ベトナムでは高齢化が急速で進んでいるため、当事者および医療従事者の何らかの意識の変化が必要ではないかと考えています。

⑤リハビリテーションに対する認識

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ここからは一理学療法士としての意見を述べます。

ベトナムでは、積極的に運動療法を実施している場面をみたことがありません。

というのも病院側が請求できる金額は物理療法とほぼ同額だそうです。

後でも述べますが、医学的知識の乏しいセラピストは「楽だから」、患者さんは「楽で気持ちいいから」という理由で物理療法を選択する傾向があるという話を現地の医師に聞きました。

先にも述べたように通常、脳卒中を発症しても超高齢者もしくは再発でない限り、ほとんどの方が再び歩けるようになります。

しかし、ベトナムの患者の場合、中年の方でも一人で歩けないケースが多いのは、このようなリハビリテーションに対する認識も影響していると考えています。

⑥セラピスト教育

ベトナムでは、セラピストになるための養成期間が数ヶ月と短く、国家試験もありません。

さらにいうと日本の日本理学療法士協会のような統一された組織が存在しません。

そのため、他の国に比べると個人の知識・技術が劣ってしまうのは仕方がないことだと思います。

事実、タイ・カンボジアなどの周辺国はWCPT(世界理学療法連盟)に加盟しているのに対し、ベトナムは未だに加盟できていません。

養成校での授業もマッサージやストレッチに関するものがほとんどのため、リハビリ=マッサージ・ストレッチと考えているセラピストが多く、リハビリテーションが進まないという現状になっています。

まとめ

私はこれまで3年間、それぞれ1週間ずつという非常に短い期間しか関わっていないので、現地で働く青年海外協力隊員や専門家の方からすれば、より多角的な見方があると思います。

このように様々な国の医療の疑問を自分なりに解釈していけたら面白いと考えています。

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